講演会 明るい明日を考える集い
 
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TVゲームで阻害される子どもの脳の発達
−−豊かな人間性を育むために−−

近年、TVゲームなど画像を中心とした遊びが、脳の前頭葉の発達を阻害し、人間性の形成に影響を与える事実が報告されています。一方、家庭では、長時間TVゲームに熱中する子どもに手を焼いています。子どもの遊びと、人間性の形成との関係を明らかにし、子どもが生きる力を育む遊びとは何かを考えてみませんか。

『TVゲームが壊す 子どもの脳』
講師:早崎知幸
社団法人北里研究所・医師

電車内でお化粧をする女性達

テレビゲームと脳の関係のお話をする前に、電車の中でお化粧をする女性達が最近増えていると言うお話しに少し触れてから話を発展させていきたいと思います。 これがどういう事であるかと考えたときに、躾や教育の問題等いろいろ考えられるますが、実はその背景にもっと別の問題があるのではないかというような事を脳の方面から捉えていった学者が最近出ています。

動物の進化と未熟性

我々人間が進化していく過程のなかで、黒人、白人、そして黄色人種と、3種類の人種に分かれていったのですが、これを進化という面から捉えると、実は我々黄色人種が最も進化していて、次に白色人種、そして黒色人種の順に進化していると言われています。ここで未熟性ということが関連してきます。

例えば動物が子孫を残していくという営みを考えてみた場合、沢山卵を産んで、その中でいくつか生き残れば良いという魚やカエル等の下等動物から哺乳類、霊長類にいくに従って少なく生んで大事に育てようという方向に進化としては行くわけです。

また卵からかえった時のヒヨドリは最初からもう歩けるわけですが、人間など霊長類は生まれたすぐは自分では何にも出来ない、まだ一人前になっていない状態、それを「未熟性」といっています。生まれて未熟である状態が長ければ長いもの程進化していると考えるわけです。

未熟性と環境への適応性

動物として進化して行けばいくほど、さまざまな環境の変化に対応しなければいけなくなってきます。そのためには、生まれた時に未熟である方が柔軟に対応出来るのです。小さい時に完成してしまっていたら、それ以上対応の仕様がないわけです。例えば人間の黄色人種の完成は25年かかると言われています。それまではずっと発達し続けるわけです。

黄色人種と躾

しかし、ここで注意しなければならないことは、未熟性の期間の長い我々黄色人種は、逆にその間に必要な躾というものを受けないで、または社会性を学ばないで成長した場合には脳の発達がうまくいかない。先程の電車の中で化粧をする話に戻りますとつまり周りに対する恥じらい或いは配慮ということがよく解らないまま育つのではないかということです。

戦後急激に変化した日本の躾

これはもう自然の智恵といいますか、神が与えた知恵ではないかと思いますが、黄色人種は元々未熟性に対応する智恵があったようです。特に日本の戦前の家庭がどういう形態であったかと考えてみると、家族の中に親戚も一緒に住んでいるわけです。そういう中で自然と躾、教育という物がなされて社会性を学んでいったと。そういう風に黄色人種の脳の発達に合わせて社会が形成されていたわけです。

ところが第2次世界大戦の後に、白人の生活というものが日本に入って来た。例えばマンションでいうとLDKの構造、子どもに個室を与えるとか。ところが黄色人種がこれをやると本当は大家族の中で社会性というものを発達させるべき脳が発達しない状態になってしまうのです。

脳の構造

人間の脳は、一番中心の所から後頭部にかけて生命維持に関係する脳幹があります。この上に旧皮質に含まれる大脳辺縁系があります。ここは感情をコントロールする所、つまり好きとか嫌いとかといったことに関連したところです。最後に一番上にあるのが大脳新皮質です。大体この三つに分けられるのです。

人間を他の動物と隔てる前頭葉の働き

この新皮質と呼ばれている所が、人間がいろんなものごとを考えたりすることに関わってくるのです。その中でも前頭葉の前頭前野という所が脳のなかの指令塔的な働きをします。人間が他の動物と違う事が出来ると言う事を考えれば分かりやすいと思いますが、創造性とか、想像力、判断力。それからいわゆる理性、思考力といった働きを司っているのです。

例えば動物は将来の目標とか、自己実現をするといった事は考えれらない。今辛いか、楽しいかと言う事しか考えられないのです。人間であれば今大変でも将来自分はこういった人間になろう、だから今はつらくても勉強するのだと言った事を考える事が出来る。これが前頭前野の働きなのです。つまり一番人間らしい脳ということが出来るのです。

あとは感情の抑制ですね。ですからここの働きが無くなってしまうと感情のコントロールが出来なくなってしまうのです。

TVゲームが前頭前野に与える影響

この人間として一番大切な前頭前野が実はテレビゲームによって非常に影響を受けているということが最近の研究で分かってきました。

日本大学の森昭雄先生に依りますと、最初はパソコンをしている人達の脳波を計ったと言う所から始まります。脳の研究をしていく時に脳波を測りますが、簡単な脳波計を作るという研究開発の目的で前頭前野つまりオデコの辺りですが、ここに脳波計を当てて脳波を調べていくうちに、本来働いているはずの脳が働いてない人達がいる事に気づいた訳です。そして結局ゲーム脳というものがありそうだというところに行き着いたということを森先生が言われております。

仮想世界での脳の働き

ゲーム脳の話をする前に現実世界での脳の話をまずいたします。例えばキャッチボールをする時、まず目から入った情報というのは、視床というところを通って視覚野に入ります。それからそれがどういう形であるとか、色であるとかいうことを判断する部位に情報が行く訳です。さらにボールが来ると言った場合に空間的にどの辺を飛んでいるのか、スピードはどれ位かなどの情報とともに前頭葉に行きます。ボールが来て、「あっ、これは捕れるから捕ろう」、或いは「早すぎるから逃げよう」と前頭葉で判断して、そこから運動野というところに情報が行く。そして運動野から脊髄を通して手に情報がいって、飛んで来たボールを捕るということになる訳です。

一方ゲームをした場合の情報は、途中までは一緒です。ところがテレビゲームの場合、視覚情報が前頭葉を通さずにいきなり運動野に情報が行く。前頭葉で判断する機能を使わなくなってしまうのです。入った情報が運動野に只反射として伝わるだけなのです。

さらにゲームだけではなくてこれはテレビジョンを漫然と見ているだけでも同じような状況になると言われています。後は携帯電話、実は携帯電話からのメールは文章のやり取りをしているから頭を働かせているように考えられがちですが、そうではなくてどうも反射的な記号として脳は処理しているようです。だから実際脳波を測ってみると携帯電話でメールを始めるとβ波が下がるのですね。パソコンをやっても最初はいいのですが、続けていると前頭葉の活動は低下するようです。

脳の発達と情報

また脳の発達には親子の間で交わされる様な双方向の情報のやり取りが必要だと言われています。テレビジョンの場合、こちらが何を言っても情報としては一方通行です。そういうことを長時間続けていると脳の発達してはあまりよくないといえます。

年齢とゲーム脳

年齢とゲーム脳の関係に触れますと、脳の仕組みが完成するといわれている中学生の子供にテレビゲームをさせてもゲーム脳にはなりにくいという調査結果があります。そういう事実を合わせて考えるとやはり中学生になる前、10歳以下に関しては、出来ればやらせない方がいいということになります。また、たとえ10歳を過ぎた場合でも全部で30分以内、30分を過ぎてくると10歳過ぎてもだんだん脳の活動が下がってくるということです。コンピューターやテレビジョン、携帯電話もそうなんですね、長時間というのはとにかく避けることです。1時間位コンピューターをやったら10分は休むなど、予め決めてやったほうがよいでしょう。

手足の運動であがる脳波

さらに大切なことは手足を動かすことです。テレビゲームで脳波の活動が下がった時に手足を動かすと、今まで下がっていた脳波が逆に上がってくるということがわかってきたのです。例えばお手玉とかは非常によいトレーニングの方法ではないかと言われていますけれども、それだけではなくて足を動かすのもいいのです。

アナログ世界の重要さ

そして実際に大自然の中で葉っぱに触れたり、においをかいだり、肌で風を感じたり、そういう五感を使ったアナログの世界ですね、現実の世界を感じ取ると言うのが非常に大事ではないかと思います。

現代社会の中における賢い子育て

現代社会においては既にテレビはなくてはならないものになっています。それをいかに活用して我々のプラスの物にしていくか、転じていくかということを考える必要があるのではないかと思います。そうでないと結局はマイナス面だけ働いてこういった前頭葉の一番人間らしいもの、人間性が喪失されてしまうのではないかと危惧しています。

日進月歩で進んでいく科学技術全盛の時代の中で我々人間が太古以来変わらぬ人間自身の本質というものを正しく知って賢く文明を利用し活かしていく知恵を持つことが最も大切なことではないかと思います。

社団法人人間性復活運動本部荏原支所 講演会より
日時:平成15年2月16日(日)14:00〜16:00
会場:東京都・目黒区緑が丘文化会館 2階第1研修室
参加費:300円(資料代)
主催:(社)人間性復活運動本部 荏原支所
後援:目黒区教育委員会、(財)国際文化交流事業財団、(株)世論時報社

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